もうそうたん

小説家を目指すメンヘラ女子の3人称の文章を練習場所。1記事を30分以内で書くという決め事でやっている。

著作権を侵害したブログが訴えられそう

晴海がテレビを見ていると玄関のドアが乱暴に閉められる音がした。篤は機嫌が悪くなると物にあたる人なので、また上司に怒られたとか些細な事が起こったのだろうとたかをくくっていたが今回はいつもんとちょっと様子が違った。

乱暴にドアを閉めると居間までドカドカとわざと音を立てて歩いてきて、自分がいかに機嫌が悪いかをアピールして最後にソファーに向かって持っているかばんを投げつけて大げさにため息をつく。ここまでがいつものワンセットなのだが、今回はドカドカと居間まで歩いてくる音がしない。

心配になった晴海はテレビを見るのをやめて玄関まで歩いてみると玄関に向かって俯いている篤の姿があった。

「どうかしたの・・・?」

晴海は問いかけるが篤からの返答はない。男の哀愁が漂う背中は色気があるという言葉をよく聞くが、この哀愁という言葉しか感じない背中を見ても色気を感じることができるのだろうか?生気が抜けきって向こう側が透けてしまうのではないかと不安になるほど哀愁が漂う背中を晴海はただただ見つめていた。

しばらくだまっていると篤がポツポツとしゃべりだした。

「俺はもう終わりだ。。。」
「何よいきなり。なにがあったっていうの?」
「あいつに目をつけられたんだよ。著作権ってなんだよ。そんなもの合ってもなくてもいいじゃないか!なんで俺なんだよ。他にもやってる人間はいっぱいいるじゃないか!」

下を向いたまま篤は怒鳴りだした。

「晴海もそう思うだろ?俺は悪くないよな?悪く無いって言ってくれよ!」
「・・・ちょっと落ち着いてなにが起こったのか話してみて。」

優しく背中をさすりながら晴海が話を促すと篤は起こったことをゆっくりと話しだした。

篤は会社の給料だけでは生活が苦しくなるためアフィリエイトを始めていた。それは自分がオモシロイと思ったテレビやラジオを文字に起こして書き出しニュースのように配信するサイトだった。最初は小さかったが段々とネットで話題になり、少しづつアフィリエイトで稼げるお金も増えてきてこれから生活が楽になるんじゃないか?そう思いだしてきた矢先にある著名人のブログから自分のブログに対して著作権侵害で訴えた方がいいのではないかという趣旨のエントリーを上げられた。そこから知らない人の罵詈雑言のコメント、メール、Twitterのメンションが1日中飛んできだした。見知らぬ人間から乞食と罵られ、生活保護でもうければいいと言われ、本日中に裁判を起こすという脅しをかけてくる人間もいた。

「なーんだ。そんなことなんだ・・・。」
「そんなことってなんだよ!裁判が起こって賠償金払わされたら数千万円払わないといけないんだぞ!」
「大丈夫よ。そんなこと起きないから。ネット弁慶たちは上がってきた話題に飛びついて文句を言いたいだけなの。世のため人のために動いてる人間なんてほぼいないから訴えられることなんて無いわよ。大丈夫だから早くご飯を食べちゃいましょ。」

晴海はそう言うと、玄関から居間に向かってすたすたと歩き出した。晴海の後ろ姿を見ながら篤は女性の強さを感じた気がしたのだった。