頭痛が痛い
「今日は頭痛が痛い」
隣にちょこんと座ったと思ったら恵は唐突にそういった。
「あら、風邪でも引いたの?」
「熱はないみたいなんだけどねぇ。なんか頭痛が痛くて」
つらそうにテーブルに伸びをしながら恵は続けた。
「そんなことより、徹くんって冷たいよね。」
「いきなり何を言い出すんだよ。別に冷たくしたつもりはないけど」
徹は恵の頭をポンポンと叩きながら言った。「すぐそうやって子供扱いする」と不満気に恵は言うが内心では喜んでいることを徹は知っていた。
「だってさ。私の話あまり聞いてないでしょ?」
「聞いてるよ。今だって真剣に話をきいてるだろ?」
「何を言ってるんだ」と肩をすくめながら欧米風のリアクションをとると、恵は「もぅ」とちょっとふてくされた。
「私が行ったこともう一回言ってみて?」
「頭が痛いんだろ?それで大丈夫かなって心配した。100点の回答だと思うけど。」
「そんなこと言ってないよ。私は【頭痛】が痛いっていったの」
「え?もしかして、頭痛は頭が痛いってぼけたつもりだったの?」
「もしかしてじゃないわよ」もう一度テーブルに突っ伏しながら恵は続けた。
「そういう些細なやりとりから私は愛情を測ってるんだからちゃんと気をつけてよね。」
「はいはい。わかったわかった」
徹はそう言うと、また恵の頭をポンポンと叩いた。「だから子供扱いしないでよ・・・」言いながら恵は顔を赤くした。徹はその顔を満足気に眺めているのだった。