もうそうたん

小説家を目指すメンヘラ女子の3人称の文章を練習場所。1記事を30分以内で書くという決め事でやっている。

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いつも通りの町並みのなかをバスが走る。徹がバスから見える町並みを見ていると「ポーン」と携帯からメールが届いた音がした。携帯を見ると里美からスタンプが届いていた。愛くるしいキャラクターが両手を前にガッツポーズをしながらファイトとこっちを応援していた。徹はそれを見て苦笑いが止まらなかった。

なんでこんなにいつも通りの町並みが違って見えるんだろう。

徹は社内から町を見ながら考えていた。しばらくして、そういえば里見に返答をしていなかったことに気付き慌ててスタンプを送り返す。いつも通りアセを書きながら下を向いて焦っているうさぎのスタンプ。そこに少しだけのメッセージ、「まかせとけ」という言葉を添えて。続けて「お父さんには逃げずにきてることを褒めてもらいたいと伝えといて」と軽口を叩くと「ポーン」という音と同時にうさぎがまたもやガッツポーズをしていた。「まかせとけ」と里見が送ってきたメッセージを眺めながら徹はまた町並みに目を戻した。

後しばらくしたらさとみの家につく。家についたらチャイムを鳴らして出てきた両親にひよこを渡して挨拶をする。すぐさま土下座をして「里見さんを僕に下さい!」というほうがインパクトは有るだろうかとシミュレーションを重ねながら、徹は何度目かわからないほど直したネクタイをまっすぐと直す。

気持ちいい日差しが降り注ぐ中、徹を載せたバスはいつも通りの町並みを走っているのだった。