もうそうたん

小説家を目指すメンヘラ女子の3人称の文章を練習場所。1記事を30分以内で書くという決め事でやっている。

出口が見えないベンチャー企業の熱狂

「仕事は成果だけで判断されるべきだ。成果が出ていない仕事は仕事ではない。」社長は開口一番にそう言った。社長はベンチャー企業らしい基質の人間だった。自分に厳しく人にも厳しく。強くあるべきで自分を律することが出来る素晴らしい人間だった。「残業…

結婚申し込み

いつも通りの町並みのなかをバスが走る。徹がバスから見える町並みを見ていると「ポーン」と携帯からメールが届いた音がした。携帯を見ると里美からスタンプが届いていた。愛くるしいキャラクターが両手を前にガッツポーズをしながらファイトとこっちを応援…

頭痛が痛い

「今日は頭痛が痛い」隣にちょこんと座ったと思ったら恵は唐突にそういった。「あら、風邪でも引いたの?」 「熱はないみたいなんだけどねぇ。なんか頭痛が痛くて」つらそうにテーブルに伸びをしながら恵は続けた。「そんなことより、徹くんって冷たいよね。…

地震と商店街とキャンドルと

商店街を歩いているとある店の前にポツンとキャンドルが立っていた。キャンドルは心もとなく光を発しながら自分の存在を少しだけアピールしているように見えた。キャンドルの上には一枚の張り紙が。「3・11。あの日起きたことを私達は忘れない。」その張り紙…

就職氷河期の就活生

薫は郵便受けの前で固まっていた。この扉を開けば結果が待っている。幸か不幸か開けてみるまでは分からないが、いままでこの扉を開けて良い知らせが入っていたことはない。大抵お金の請求か「お祈り」の手紙かどちらかしか入っていないのだ。しかし、この地…

オフサイド

目の前で怒鳴っている男がいる。自分がいちゃもんを付けられているというのは頭では分かっているがどこか冷ややかな目で太郎は相手を見つめていた。「ちょっと聞いてんのかよ。さっきのは明らかにオフサイドではなかっただろ!」男性はなおも太郎に向かって…

ある募金活動に対するいちゃもん

「恵まれない子どもたちに愛の手をお願いしまーす」「お願いしまーす」と周りにいる同級生も続ける。週末は街頭に立ちボランティアで募金を募る。武が中学に入ってから1年半続けている習慣だった。始めたきっかけはなんとなく暇だからというすごく不順なもの…

専業主婦と男子

「大体みんな分かってないよね。」彰は不満そうに言い出した。「専業主婦が楽だっていう男の気持ちを考えたことある?」 「楽そうだから楽だって言ってるだけでしょ?バカにされてる様にしか感じないけど。」テレビから視線を逸らすこともなく由美子は答える…

逆チョコで告白

「あの、すいません・・・。」不意に声をかけられ、思わず振り向いて光子は思わず舌打ちをしそうになった。 振り返った先には気の弱そうな男性がしたを向きながらもじもじしていた。「あの、今日ってバレンタインデーですよね?」 「そうですね。それがどう…

河川敷を散歩する二人

穏やかな春の日差しが気持ちいい午後。隆と光子は散歩をしていた。晴れた日は河川敷を散歩するのが習慣になっている二人はいつも通り川の隣の道を歩いた。二人の前で犬の散歩をしている老人がいる。老人はゆっくりとしたスピードで歩いていて、そのスピード…

僕は彼女がほしいわけじゃない

「わかったんだ。僕は彼女がほしいわけじゃない。彼女がいるというステータスがほしいんだよ」嬉々とした表情で雅史は語りだした。「彼女がいる生活っていうのはすごくいいと思うよ。でも色々弊害が有るじゃないか。例えば時間。彼女ができると僕はその人と…

30歳ぼっち。山に登る

智は山に登っていた。登っている道の先を眺めても木しか見えない。横を向くと木の隙間から見えるのも更に木。上を眺めるとかろうじて葉の間から空が見えるが今が腫れているのか曇っているのかいまいちわからない。生い茂った葉の間からしか光が差していない…

著作権を侵害したブログが訴えられそう

晴海がテレビを見ていると玄関のドアが乱暴に閉められる音がした。篤は機嫌が悪くなると物にあたる人なので、また上司に怒られたとか些細な事が起こったのだろうとたかをくくっていたが今回はいつもんとちょっと様子が違った。乱暴にドアを閉めると居間まで…

雨の音

正雄が会社を出るとシトシトと雨が降っていた。正雄は雨の音が小さい頃から好きだった。あのシトシトという音を聞いていると自分のために世界が悲しんでくれる気がするからだ。正雄の目の前を傘をさした人々が無表情に過ぎ去って行く。あまりの無表情さに自…

ブログって知ってる?

「ブログって知ってる?」由美子は目の前でクルクルとコーヒをかき混ぜながら唐突にしゃべりだした。「あれって何が楽しいのかしらね。自分の身の回りで起こったことを全世界に発信して恥ずかしくないのかしら。」 「なんだろうね。僕もブログは書いたことが…