2014-02-01から1ヶ月間の記事一覧
薫は郵便受けの前で固まっていた。この扉を開けば結果が待っている。幸か不幸か開けてみるまでは分からないが、いままでこの扉を開けて良い知らせが入っていたことはない。大抵お金の請求か「お祈り」の手紙かどちらかしか入っていないのだ。しかし、この地…
目の前で怒鳴っている男がいる。自分がいちゃもんを付けられているというのは頭では分かっているがどこか冷ややかな目で太郎は相手を見つめていた。「ちょっと聞いてんのかよ。さっきのは明らかにオフサイドではなかっただろ!」男性はなおも太郎に向かって…
「恵まれない子どもたちに愛の手をお願いしまーす」「お願いしまーす」と周りにいる同級生も続ける。週末は街頭に立ちボランティアで募金を募る。武が中学に入ってから1年半続けている習慣だった。始めたきっかけはなんとなく暇だからというすごく不順なもの…
「大体みんな分かってないよね。」彰は不満そうに言い出した。「専業主婦が楽だっていう男の気持ちを考えたことある?」 「楽そうだから楽だって言ってるだけでしょ?バカにされてる様にしか感じないけど。」テレビから視線を逸らすこともなく由美子は答える…
「あの、すいません・・・。」不意に声をかけられ、思わず振り向いて光子は思わず舌打ちをしそうになった。 振り返った先には気の弱そうな男性がしたを向きながらもじもじしていた。「あの、今日ってバレンタインデーですよね?」 「そうですね。それがどう…
穏やかな春の日差しが気持ちいい午後。隆と光子は散歩をしていた。晴れた日は河川敷を散歩するのが習慣になっている二人はいつも通り川の隣の道を歩いた。二人の前で犬の散歩をしている老人がいる。老人はゆっくりとしたスピードで歩いていて、そのスピード…
「わかったんだ。僕は彼女がほしいわけじゃない。彼女がいるというステータスがほしいんだよ」嬉々とした表情で雅史は語りだした。「彼女がいる生活っていうのはすごくいいと思うよ。でも色々弊害が有るじゃないか。例えば時間。彼女ができると僕はその人と…
智は山に登っていた。登っている道の先を眺めても木しか見えない。横を向くと木の隙間から見えるのも更に木。上を眺めるとかろうじて葉の間から空が見えるが今が腫れているのか曇っているのかいまいちわからない。生い茂った葉の間からしか光が差していない…
晴海がテレビを見ていると玄関のドアが乱暴に閉められる音がした。篤は機嫌が悪くなると物にあたる人なので、また上司に怒られたとか些細な事が起こったのだろうとたかをくくっていたが今回はいつもんとちょっと様子が違った。乱暴にドアを閉めると居間まで…